鍵をかけたか、何度も確認してしまう。それは神経質?
「ドアの鍵をかけたか気になって、何度も家に戻る」「手を洗っても洗っても、汚れが落ちた気がしない」——そういった経験は、多くの人にあると思います。
でも、その確認や行動が止められなくなり、日常生活に支障が出ているとしたら、それは「神経質な性格」とは少し違うかもしれません。
世界保健機関(WHO)の報告では、強迫性障害は生活上の機能障害を引き起こす10大疾患のひとつに挙げられています。
強迫症(強迫性障害)とは
強迫症には、大きく2つの症状があります。ひとつは強迫観念——繰り返し頭に浮かんでくる考えで、無意味・不合理だとわかっていても無視できず、強い不安や不快感を引き起こします。もうひとつは強迫行為——その不安を一時的に和らげようとして繰り返す行動です。
強迫行為によって不安は一時的に下がりますが、結果的に「その対象がより怖いもの」として感じられるようになり、やり過ぎとわかりながらもさらに繰り返すという悪循環に入ります。
よくある例としては:
- 鍵・ガス・電気などを何度も確認する
- 汚染が気になり、手洗いが止められない
- 「縁起が悪い」と感じる数字や言葉を避ける
- 物の配置や順番が「ちょうどよくない」と感じ、やり直しを繰り返す
こうした状況が続くことで、不安を引き起こす場面や行動を避けるようになり、日常生活が大きく制限されることもあります。
「頭ではわかっている」のに変えられない?
強迫症を抱える方からよく聞く言葉があります。「自分でもおかしいとはわかってる。でも止められない」。
これは意志が弱いのでも、性格の問題でもありません。
強迫症の原因はまだ解明されていない部分も多いですが、脳の神経回路の働き方や情報伝達の機能に関係していると考えられています。
わかっていても変えられないのは、脳のレベルで起きていることだからと言われています。
心理療法・カウンセリングでできること
強迫症に対して、現在もっとも科学的根拠(エビデンス)が示されていると言われている心理療法のひとつが認知行動療法です。
かつて強迫性障害は「どのような治療方法も自然経過以上の効果はない」とされていた時代もありました。しかし認知行動療法の発展により、治療によって改善が期待できる疾患となりました。
なかでも中心的な方法が曝露反応妨害法(ERP)と言われる技法です。
これは、不安が生じてもすぐにそれを鎮めようとせず、あえて不安な状況に自分をさらすことで、時間とともに不安が自然に下がっていくことを繰り返し体験する方法です。
強迫行為をしなくても不安が下がることを体験することで、強迫行為が少しずつ減少していきます。
初めからいきなり、強い不安のものから扱うのではなく、初めに不安の強いものと、弱いものを明らかにし、扱いやすい不安から行っていきます。
心理療法・カウンセリングは行うと必ず「すっきりする」というものではありません。自分の感情や思考のパターンを丁寧に見ていく作業は、しんどく感じる時間もあります。
それでも、その作業を続けることで、自分への負荷が少しずつ下がり、「これしかできない」から「こんな選択もある」へと、選択肢の幅が広がっていく可能性があります。
変化は、一気には来ないものです。でも、少しずつ「自分の扱い方」がわかっていく——その積み重ねが、心理療法・カウンセリングの価値の一つかと感じております。
「このような内容でも相談してよいのだろうか」と迷われている方へ。
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いまにしこころの相談室
代表 今西 広嗣
