|コラム#8|不登校:親ができるかかわり方と小さなステップ

|コラム#8|不登校:親ができるかかわり方と小さなステップ

はじめに

 こんにちは、いまにしこころの相談室の今西です。

 前回のコラムでは、不登校・ひきこもりという状態の中で、子どもが抱えやすい心理や日常でのサインに目を向け、「子どもの気持ちを理解する」ことの大切さについてお話しました。

 大切なポイントは、「安心して話せる雰囲気をつくる」ことと、一度、「今は、学校に行きたくない気持ちなんだね」と受け止めることとお伝えしました。

 今回は、実際に親が日常でできる関わり方や、小さなステップを重ねていく考え方について、一緒に考えていきたいと思います。

まずは「安心できる環境」から

 不登校の理由はそのお子さんの数だけたくさんあるのですが、その中に、学校や学業、人間関係に疲れてしまい学校にいけないケースがあります。その場合、特に「安心できる環境」である家で元気をためることが大切です。

 お子さんは学校に行っていないことについて平気な様子を見せる場合もありますが、多くは学校に行けていないことにひそかに苦しんでいます

 そのことを考えると非常にこころが疲れてしまい、学校に戻る気力を失ってしまいやすいです。また時に学校に行くような登校刺激を与えることは有効な場合もありますが、登校刺激を続けると学校にいけない自分を責めてしまい、家が「安心できる環境」ではなくなってしまう場合もあります。 

 そのため、学校にいけないことよりも、家で安心して過ごせるようにしてあげることが一つ大切なことです。

 想像してみてください、ご自身が社会に出て働いていたけど頑張って疲れて、休職したとします。

 その時に同居している家族から、仕事をしていないことを繰り返し指摘されたとしたら、すぐに元気を取り戻して会社に戻れるでしょうか?

 その場合、できない自分を責めてしまい、調子を崩すか、同居の人との関係が悪くなることが考えられます。

 お子さんも、まずは家に「安心できる環境」を作り、元気をためやすい環境を作ることを目指しましょう

親ができる7つの工夫

・学校を休みたい気持ちを受け止め、認めてあげる

・学校にいけない理由を必要以上に何度も聞かない

・できていないことに注目して指摘したり怒らない

・ルールで厳しく縛りすぎない

・学校の話ではない、たわいもない話をたくさんする。

・ちょっと「えっ」と思うことでも、「あなたは今そういう気持ちなんだね」と受け止める。

・親も元気にいられる環境づくりをする

まずは子どものペースを尊重する

 「このままで大丈夫なのか?」「社会に出れないのではないか?」といった焦る気持ちは、皆さんお持ちだと思います。

 しかし文部科学省から、不登校の85%は復帰し、高校進学しているというデータが示されています。

 焦りや心配が強くなってしまうと、子どもを責めてしまったり、強い言葉、行動をしてしまうことで、子どもも親も傷ついてしまったりということが起きやすいです。

 子どもによって、復帰のペースは様々です。今すぐ無理やりに学校に戻しても、原因となるものが解決していないと、またすぐに不登校に戻ることもあります。

 また長い目で見ると、原因を解決しないまま社会に出るまでは頑張れたけど、社会に出てからつまづき、働けなくなるといったことも起きてしまう場合があります。

 そのため、まずは、子どものペースを大切にしましょう。

 出来ていない事に注目するのではなく、できていること、できるようになったことに注目してみましょう。

 例えば、以前できていなかった。「朝、少しでも布団から出られた」「ご飯を一緒に食べられた」「好きなことを話してくれた」これだけでも、とても素晴らしいことです。

 そんな小さいと思える行動でも「よかったね」「うれしいね」と伝えることで、子どもは少しずつ自己肯定感を取り戻していきます。

 自己肯定感が高まると自信になります。自信を持つことは学校への復帰の力になります。まずはその子のペースで、自信をつけられるように気持ちを受け止め、声掛けしていきましょう。

小さな成功体験を積み重ねていく

 不登校やひきこもりの方の復帰は、多くの場合「一気に」ではなく、「少しずつ」進んでいきます

 はじめは、部屋から出てこないお子さんが、リビングで過ごせるようになり、庭に出れるようになり、近所に出かけられるようになり、というように少しずつ社会とのつながりを持てるようになってきます。

 学校にいけないお子さんの場合も、いきなり教室ではなく、保健室登校から教室に戻ることもよくあります。

 その時に大切なのは、「小さな成功体験の積み重ね」「そこは安全なのだという体験」です。

 そのためには、スモールステップで段階を踏んでいくことが大切です。1つの例を挙げてみます。

①元気をためる段階

 まずは元気をためていくことが大切です。学校に行くことで消耗しているお子さんも多いかと思います。何か活動をするためには元気が必要です。

 家が「安心できる環境」であれば、元気はたまりやすいですし。家族が、今は休むことを認めてくれると、自分を責める頻度は下がるでしょう。

 元気がたまってくると、自分が楽しめる活動をしていけるようになりますし、新しいことをする意欲も戻ってくるでしょう。

 大切なのは元気になったからと、この時期に学校に戻そうとすると、思ったより元気がたまっておらず、またすぐに学校に行けなくなってしまうことや、学校に行かせるため繰り返し怒ってしまうことで親子のコミュニケーションが取れなくなってしまうことがあります。

 焦る気持ちが生まれてきやすい時期ですが、慌てないことが大切かと思います。

②安全を確認する段階

 そうして元気がたまってくると、外出をしたい気持ちが出てくるかもしれません。

 「〇〇いきたい」と言えるようになったら、少し元気がたまってきている証かなと思います。

 まだ家の外に出るのがしんどい時は、玄関まで行ってみる、駐車してある車のところまで行ってみるなど、外に出ても別に平気だったという経験をしてみるのもいいかもしれません。

 近所に親とおやつを買いに行って、別に平気だった。学校の近くを通ったけど、しんどくなかった。同級生にあったけど、別に嫌なことを言われなかったなど、自分が思っていることがその通りにならないのだという体験は大切です。

 ここで注意したいのは、いきなりお子さんの意向を確認せず、学校に連れて行ったり、友達を家に招いたり、担任の先生に無理やり合わせるなど、無理になれさせないようにすることです。

 もしそういうことをしたいのであれば、お子さんと相談して同意を得てから行うこと、調子を崩しそうになったら早めに切り上げることなどが大切です。

③小さな成功体験を積み重ねていく段階

 外に出られるようになると、外で体験できる活動を取り入れてもいいかもしれません。

 例えばキャンプをするとき、お子さんにまき割り、魚釣りなどの簡単な役割を与えて、成功体験を積ませるなど、この時期に行うと自信につながるでしょう。

 小さな成功体験が積み重なって、初めて、学校に戻ってみようかなというチャレンジができるのかなと思います。

 このくらいの時期になると、元気になってきており、家事の手伝いなどできるお子さんもいるかもしれませんが、やらないといけない事にはしないことが大切です。無理をしなくてもいいことを伝え、やってくれたら、ちょっとしたことでも、ありがとうと伝えましょう。

④学校に戻ろうとする段階

 この時期になると、親は学校との調整や相談を行えるといいかもしれません。まだまだ学校に戻ることは不安でしょうし、勉強の遅れなどではじめは大変でしょう。

 家では安心して休める環境づくりを継続しながら、学校でちょっと頑張るくらいから始めましょう。

 お子さんによってはすぐに教室に行けるようになる子もいるでしょうが、いきなり一日行けなくても大丈夫です。

 学校の先生と相談しながら、今は朝からの登校ではなく、何時くらいから登校を始める。登校の場所はいきなり教室か、保健室かはじめはハードルを低く設定し、慣れたら小さくステップアップしていく方法もあります。 

 ここでも「小さな成功体験の積み重ね」「そこは安全なのだという体験」が大切です。

 ときには疲れて学校を休みたいということもあるかもしれませんが、お子さんや学校と相談しながら、お子さんのペースを作っていきましょう。

おわりに

 今回は「不登校:親ができるかかわり方と小さなステップ」についてまとめてみました。

 お子さんの不登校や、ひきこもりは、短期間で終わる場合もありますが、多くは長い時間かかるものです。お子さんが「明日は学校行く」と言っても行けなかったりと、期待とがっかりを繰り返す場合も多いかもしれません。

 そのため、不登校やひきこもりのご両親には、まずは親が元気になることを大切にしてほしいと伝えています。

 子どもが大変な時に、それどころではないとお考えの方も多いかもしれませんが、お子さんのことを気にかけつつも、ご両親がそれぞれ自分の趣味や仕事、家庭での生活を充実させていくことで、自然とお子さんも学校に戻っていく場合があります。

 「子どもがカウンセリングには来たくないと言っているので、親が来ました」といい、しばらくカウンセリングをすると「子どもが学校に行けるようになりました」という報告を受けたことも少なくありません。

 お子さんが不登校やひきこもりになると、家族だけで抱えてしまうことが多く、先も見えないので、消耗してしまうご両親も非常に多いです。ですが、まずはご自身の元気になることが大切です。

 そして家族だけで抱えず、学校、小児科等の病院、教育支援センター、フリースクール、相談室などの社会資源とうまくつながり、皆でお子さんやご家族を支えることが、不登校、ひきこもりの解決につながりやすくなるのではないかなと感じております。

次回は、「専門家、社会資源の活用と親のセルフケア」についてまとめてみようかなと思っております。

 最後までご覧いただきありがとうございます。

いまにしこころの相談室
代表 今西 広嗣

参考文献・ホームページ

不登校のこどもへの支援については、これまでも文部科学省による取組が進められてきました。不登校の背景には、様々な事情が複雑に関係している場合があるため、学校・教育…
www.cfa.go.jp
厚生労働省が運営する、全国のひきこもり当事者・家族・支援者の声をみんなにシェアするWEBコミュニティーです。
hikikomori-voice-station.mhlw.go.jp

こころの電話帳:宮崎県の様々な相談窓口(外部リンク)